テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.4「合資会社がSOHOにピッタリな幾つかの理由」

1998年3月中旬執筆('98年4月号掲載)

 前号ではSOHOについてそのイントロダクション的なことを幾つか書かせて頂きました。
 で、今回は、さらに突っ込んで「SOHOのあるべき姿」を《法人組織》という視点で述べてみようかと思います。

 さーてお立会い!まずは、あまりマルチメディアとは関係のないお話でございます。(ちょっと講談風)
 個人で事業をやるのと法人で事業をやるのとでは、いろんな面で違いがございますな…。
 まずは税金の問題…。「青色申告のススメ」などと言った節税の為のガイドブックが山のように出版されておりますが、相当端折って言っちゃいますと《とどのつまり、法人にしちゃうのが一番効果的!》という事が概ね書かれているようでございます。
 それともう一つ、重要なのが信用の問題…。「○×個人事務所」というのと「○×株式会社」では、意味はよく分からなくても、何となく会社と言った方が大きな感じがしますし、つぶしが利くような気が致します。不思議ですね。

 というわけで、まずは『SOHOの法人化』というお話を進めてみようかと思います。

 後ほど書きますが、実は私のところ(毎度お馴染みインターネットラジオfmc)もナント!法人化しちゃったのであります。その奮戦記は後程…。

 さて、法人にもいろいろとございまして、ここ「九州テレコム振興センター」のような社団法人。他に財団法人、宗教法人というのもありますね。…ま、これらは専ら「公益法人」ということであくまで別格扱いと致しまして、ここではいわゆる「営利法人」について述べていきたいと思います。

 営利法人は、具体的に言えば《利潤を追及する社団》ということになりますが、代表的なものとして株式会社・有限会社・合資会社・合名会社というのがあります。なんとなく株式会社が一番立派で、どちらかと言うと今一つパッとしないのが合資・合名会社…というイメージをお持ちになることでしょう。いや、実は私も最初はそうだったのですよ。でもホントは違うんですねぇ。ナントどの会社も全て《法人としての権利は同等》なのです。否、むしろ資本金1千万の株式会社と、同額資本金の合資会社を比較するならば、無限責任を帯びた分だけ合資会社の方が勝るかもしれないというほどなのです。
 そしてそして、SOHOに最も適した法人スタイル…それが『合資会社』本当の姿だったのであります。

突然ですが提言です。
「テレワークとかSOHOだとかを推進する全ての皆様に申し上げます。《合資会社》についてもっと勉強致しましょう。日本のベンチャーを救う最後の切り札、それは間違いなく合資会社なのです」

『みんな分かってないんだなー』
 いやぁ、偉そうに言うつもりはございません。実は、私も合資会社について学び始めてまだ1カ月とちょっとなのです。しかし、その1カ月とちょっとの奴が、もう合資会社の経営者でありますよ。それくらいインスタントに理解できてしまうのが凄いところです。悪名高き《何でも複雑にしないと気が済まない日本国制度》の中で、実にアメリカン!!実にベンチャー!!実に何でもあり!!なのが合資会社というスタイルなのです。
 ただ問題なのは、先程もちょっと述べましたが「合資会社に対する偏見と差別」であります。合資会社や合名会社と聞くと、つい酒造業とか味噌醤油醸造業などの伝統ある家族的経営スタイルを思い浮かべることでしょう。要するに言葉は悪いですけど「古臭い」と感じてしまうわけです。ところがこれが《大きな大きな間違い》なのであります。

資本力の無い人が、自分の頭脳とセンスだけを元手にして堂々と勝負するには。
 株式会社の最低資本金は1千万円。有限会社にしても最低3百万円が必要です。設立する手続きもかなり面倒です。それに出資者がうるさく経営に口出しすることも当然予想されますよね。資本力の無い人が、自分の頭脳とセンスだけを元手にして堂々と勝負するいわゆるSOHO的ベンチャースタイルにとって、横からごちゃごちゃ言われるのが最も起業意欲を削がれる要因です。
 ところがところが!合資会社は違いますよ。最低資本金というもの自体が定められていません。理論上は最低資本金1円!でも設立可能です(あくまで理論上ですが…笑)。出資形態もほとんど自由です。笑っちゃう話ですが「私は経営者として責務を担うぞ!やる気があるぞ!」と言うだけで、そのやる気すらもナント出資対象になってしまうのです。
 また、合資会社には有限会社のような《出資者の数が50人以下》などのうるさい制限がありません。つまり《何人でも自由に出資者を募ることが出来る》のです。この点ではむしろ株式会社に最も近いスタイルだと言えます。ただ、株式会社と異なる点として《合資会社の出資者は、株式会社の株主のような発言権はない》ということが挙げられます。なんとなくマイナス要因のように感じられるかもしれませんが、これはむしろSOHOにとってはプラス要因なのです。あくまで会社経営者の思想と手腕を信用して《全権を任せて出資する》というのが合資会社の大前提ですから、経営者は思う存分自分のやりたいことをやることが可能です。要するに横からごちゃごちゃ言って来ても馬耳東風でやり過ごすことが出来るのです。(笑)
 どうです?ここまで書けば、いかに合資会社がSOHOに合ったスタイルかがご理解頂けると思います…。

 社員の数も極めて少数もしくは自分1人、財産といえばパソコンと自分の脳みそ、他に携帯電話くらいでしょうか、そんなSOHOとやらに株式会社とか有限会社の仰々しいスタイルが必要でしょうか。
 元々、商業と言えば《モノを売買して利潤を稼ぐこと》を言いますが、それを支えるためには、例えば在庫を抱えたり、信用を得るために土地などの担保が必要だったりします。要するに「所帯が大きくなりがち」です。そのためにはある程度の人材と資本が求められますから、資本力のある株式会社とか有限会社のスタイルが重視されていたわけです。ということはですよ、むしろ株式会社とか有限会社の方が古典的商業スタイルなのであって、合資会社の方が先端的なスタイルだとも言えなくはないのです。実際、アメリカで近頃制度化されたLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)は、株式会社と合資会社の長所を融合させた先進的な法人形態です。
(…という商業概論のレクチャー以前の問題として「とりあえずカッチョよさそうだから株式会社にしておこう!」という軽ーい思想で全国に山のように株式会社が作られたという歴史的経緯もありますけどね。以前の商法では35万円で株式会社が作れましたから…)

 いつの間にか、御三家・御三卿・普代大名・外様大名のような格付けが株式・有限・合資・合名の順で出来上がっているかのような風潮がありますが、それは「自己破産すると選挙権が無くなるよ」という《大誤解の都市伝説》に匹敵する大間違いなのであります。
 現に税法上、銀行取引における信用の問題、全てにおいてこれらは完全に同格なのですから。

『恐怖!!有限責任と無限責任の罠!?』
 いろんなビジネス書、特に『有限会社を作ろう』とかいうジャンルの本を見ますと、必ず書いてあるのが《株式・有限会社の出資者は有限責任社員で、それ以外は無限に責務を負う》というお題目です。これは嘘ではありません、ホントの話です。有限責任社員は、自分が例えば10万円出資した会社が倒産した場合、その10万円を損するだけ…ということです。一方、無限責任社員というのは、会社がつぶれた場合、その負債全てを背負う義務があるということです。いやぁ怖いですねぇ。会社がつぶれたら自分の全財産がパァーになるかもしれません。夜逃げしなけりゃならないかもしれませんね。

…でも、おかしいと思いませんか?

 夜逃げする経営者ってみんな合資会社や合名会社の人なんでしょうかねぇ。そんなことはないでしょ。株式会社や有限会社の方が圧倒的に多いんじゃありません?
 ここなんですよ、ビジネス書の下らないところってのは。例え株式会社だろうと有限会社だろうと、設立してから大して年月の経っていないところに金融機関はおいそれとは融資してくれません。結局、経営者の個人資産を担保にしたり、経営者本人を保証人にするわけです。なんてことはない、結局これって無限責任じゃないですか。
 SOHOは設備投資や人件費等の経費が極めて小さいのが最大の特徴です。わさわざ借金までして資本金を集めて株式会社や有限会社を作るのは極めて下策です。軽ーく軽ーく無借金経営で行けば、無限責任なんて何の問題もありません。むしろ刺激があってヤル気が出るくらいです。(笑)

『結論』
 SOHOには誰が何と言おうと「合資会社」がピッタリです。現に、中学生が仲良しサークルを発展させて作った合資会社が、情報ビジネスの波に乗って成功した最近の例もあります。
 そうです!自分の知恵とセンスそして経営していく自信があれば、今すぐ合資会社を作りましょう!!
 合資会社設立に関する諸々の情報を実に分かりやすく説明した本『資本金1万円で会社をつくる方法』(オーエス出版)というのが出ています。ビジネス書の中ではキラリと光る実に秀逸な一冊です。興味のある方はご参考まで…。



実践!!月曜倶楽部合資会社設立奮戦記
 インターネットラジオfmcについては、手前味噌ながらこのコーナーで毎回ご紹介させて頂いておりますが、既に5万アクセスを軽ーく突破!この号が出る頃には《7万アクセスも突破》していることでしょう。
 番組1本当たりのリスナー数で言えば、当然のことながら、一般的な地方型コミュニティ放送の番組のそれを見事に抜いているわけでして、まさにインターネットラジオの可能性を大きくアピールしているわけです。早くもノリのいい関東近辺の幾つかのコミュニティ局から『ねえねえスーパーバイジングしてして!』という依頼を受けておりまして、そんなこんなで、遠方からの来訪者が激増しているわけであります。(在九州各局の皆さんからのコンタクトも心よりお待ちしております!)
 こういう「なんだか最近影響力を増して来たぞー!」という団体が、単なる任意団体(要するにサークル活動)であるという不自然さに怪しげな快感を覚えながらも、そろそろ我々の実力を本格的に世に問うても良い時期であろう…との前向きな判断から、この度、正式に法人化するに至りました。ちなみに形式は合資会社(やっぱり!)です。
 何でも自分達でやってしまうのが私共fmcの特徴でありまして、今回も登記手続きの全てを自分達でやり遂げました。もっとも合資会社の設立手続きは笑っちゃうほど簡単です。行政書士の手をわずらわせるほどのことではありません。自分でやればタダですもんね。
 私共にとってバイブルとなったのが、先程ご紹介した『資本金1万円で会社をつくる方法』という本…。まさに最強の設立マニュアルになりました。定款の書き方から、登記簿の原本になる用紙の書き方などなど、実に簡潔に説明されていて、大助かりでありました。
 書店でビジネス書のコーナーを眺めてみますと、株式会社や有限会社について解説した本ばかりで、合資会社に関する本やSOHOの実態に合った本がほとんど皆無であることに気付きます。日本のビジネス書が時代からワンテンポ遅れていると自ら証明しているいい例です。
 また、多くのベンチャービジネス扇動家やSOHOコンサルタントという輩が、今だに『まずは有限会社を設立致しまして…』なんて講演している姿(かなり多い)を見ますと、顔に蒸しタオルでも投げつけて目を覚めさせてやりたくなります。

 さてさて、話題を本線に戻しましょう。必要書類も作り終え、次はいよいよ印鑑の押印です。ちなみに我が社の印鑑は出資者の一人である堀口昌子さんと私の余計なお手伝いによる手彫りです。ちょっと下手ウマですけど、逆に偽造される心配はまず無くなりました。(笑)
 それにしても、押印する《箇所の多さ》には閉口しましたね…。出資者全員の実印やら会社代表員やら捨て印やらなんやら、書類のいたるところに山ほどハンコを押さなけりゃならないのも日本型手続きの偏質的なところだと実感した次第です。
 会社設立の手続きだって「メールで一発!!」という感じに出来ないことはないはず。印鑑という概念を、もっと電子的に使えるシステムに発展させて、一日も早い《省力化とスピードアップ》を図るべきでしょう。最後に、手続きで一番腹が立ったのは登記の際に購入しなければならない収入印紙6万円也。なんでたかだか登記するだけなのに6万円も払わなければならないのか。高くて全く頭に来ますね。やる気のある若者達に会社設立の機会を作ってやることが、停滞する日本経済浮揚の一助となるはず。もっと安くして会社を作りやすくするべきだと思いますね。費用の低減を声高に申し上げておきましょう。
 さて今、手元に登記簿謄本があります。(これも1枚につき8百円も取られます。全くもってボッタクリです…)しかし、この謄本を見ると、いよいよ会社なんだなぁという実感が湧いて来るから不思議ですね。ちなみに月曜倶楽部という社名は、アルファベットが使用出来ない我が国の登記システムを逆手に取って漢字表記にしたものです。
 これからインターネットラジオは勿論のこと、一般の放送局での番組制作、出版物の企画制作などなど「九州を面白くさせる企画」をバンバンぶつけて参ります。どうぞご期待頂きたいと思います。



『九州田舎改造論』
 先日、北海道電気通信監理局の皆さんが、札幌からわさわざ私のSOHOまで取材にお越しになられました…。1時間ばかり、いろいろとお尋ね頂いたのですが、中でも一番重要な課題ということで『マルチメディアは果たして過疎化の薬になるか?』という質問を頂きました。いろいろとお答えしましたが、普段から取り組んでいる問題でもありますので、改めてこのページを拝借して私見を述べさせて頂こうと思います。

全員が船に乗れるわけではない。
 こう書くと語弊があるかもしれませんが、敢えてはっきり申し上げましょう。日本の過疎地域で《過疎から脱却できるところはごく一部》に限られます。例えば地方自治体を一企業として考えたとき、慢性的な赤字経営から黒字に転換できるところはごく少数で、かなりの数の自治体は間違いなく倒産するだろう…と私は考えています。
 何故なら、過疎化というのはそのままズバリ『高齢化』を意味します。つまり、若者の流出が人口ピラミッドを頭でっかちの歪な形にしているわけです。
 ここでちょっと考えて見て下さい。過疎自治体の倒産の理屈が見えてきますよ。答えは簡単!「年寄りばかりなんですから、子供を産む能力のある世代が居ない」…要するに後が続かないんですよ。
 ではどうすれば良いか。こちらも答えだけは簡単です。
「若者を流入させれば良い」
のです…。ところがどっこい、これが至難の技なんですね。
 なぜ至難の技なのか…。これも簡単!「メンツにこだわるから」ダメなのです。
 ぶっちゃけた話。その地域の議会や首長らが、自らのメンツと利権にこだわるあまり、地域の発展のベクトルを歪めてしまっている例が実に多い。
 なけなしの予算や国からの補助金で「物産館」という得体の知れない建築物を作る自治体をよく見かけます。目的としてはその地域の名産品や特産品を観光客などに販売啓蒙しようということらしいのですが、ちょっと考えればそれが全くの下策であることに気付きます。何故なら、余程の観光資源を備えた《求引力のある地域》であるならまだしも、大して知名度も高くない、単なる田舎でござい…といった所にいきなり名産品を並べて、一体誰が買いに来るというのでしょう。土産物というのは観光とセットにならなければほとんどの場合意味を成しません。
 議会関係者や首長は、本心から若者を流入させて地域の発展を成そうと祈念するのであれば、絶対にメンツを捨ててかからなければなりません。それは自らの利権を放棄しなければならない局面をも伴う可能性がある大手術であります。

何をすべきか。
 オラが村の明日を託せる若者を集めるのに、実にイイ例があったじゃありませんか。《長野オリンピック》ですよ。選手村にはどういう施設があったか思い出して下さい。
 村内対抗カラオケ大会くらいにしか使われない「多目的ホール」という用途不明の施設がありましたか?お婆さんがストーブの前で寝ぼけて店番をしている寂れた物産館というのがありましたか?
 こういう大して役に立たない施設に大金を使う余裕があったら、村営のコンビニ、レンタルビデオ店、書店、ミニシアター、DJクラブなどなど、若者のニーズに合ったスモールショップを並べて建てちゃいましょう。ちょっと洒落たプレハブいいんです。安いですよ。建て増しすることも考慮しておけば、インディーズブランドを展開する若手デザイナーのショップを誘致することだって可能です…。(下手な工場を誘致するより余程可能性は高い)
 そしてゾーンの中心部に超破格家賃!光ファイバーによる情報端末完備のワンルームマンションを建てて、日本中のSOHO人間に衝撃を与えるようなクリエーター村を作ってしまえば良いのです。
 ともかくココに来れば《何か新しい文化に出会える》というふうにしちゃえば、放っておいても人はどんどん流れて来ます。近くに鉄道が走っている所、幹線道路が比較的近い所なら尚のこと効果は倍増します。
 結果として税収のアップ、人口のアップ・・・ってことになりますね。
「そんなに旨い話が出来るものかねぇ」…そう思われるでしょうね。ですが、実は核心の部分は上記の文章には入っていないのです。これはあくまで私の企業秘密なので悪しからず。(笑)

興味がお有りなら、お問合せ下さい。
 本気で過疎に打ち勝つぞ!とお考えの方からのコンタクトをお待ちしています。
 もっとも、温泉センターと地ビールだらけの《金太郎飴状態》で良いのでしたら処置無し…かな。ま、私の出番はありますまい。(笑)
 もし、金太郎飴型の過疎集団から抜け出したい!と本気でお思いでしたら、そろそろ私の出番かもしれません…。
『カッチョいい田舎を作りましょ!!』

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