テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.12「春はマルチメディア!ほんとかな?というお話。」
怪しい勧誘に乗ってしまうのは誰?
2000年2月下旬執筆(2000年4月号掲載)

 さて今回は2本立てです。「毒舌も程々にせい!」とのお叱り覚悟で申し上げる「どうする?マルチメディア」というテーマ。そしてもう1本「Webはライブかオンデマンドか」で参ります。

どうする?マルチメディア
 西暦2000年になって数カ月…。Yahoo!株は天井知らずで上昇するわ、インターネット接続料が軒並み値下げで新規ユーザーが一気に増えるわ、FMCが20万アクセスを突破するわ(これは蛇足)でまさにマルチメディアの時代が本格的に動き始めた感があります。
 テレビでもプロバイダ関係のCMがやたらと増えましたし、パソコンショップでプリンタのインクを買う度に某プロバイダのサンプルCDが必ず袋に入っていて、もう10枚以上同じCD持ってるわい!という景気が良いと申しますかある意味「迷惑じゃい!」てな状況になっております。
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 さてさて、プロバイダさんの宣伝でよく聞く言葉…「今こそインターネットで最新情報をゲット!」これはいいんですよ。ユーザー増えますし、競走原理が働いて接続料金が下がりますからね、むしろ大歓迎です。
 しかしこんなのありますよね…「今こそインターネットで情報発信!」「今こそインターネットで顧客をゲット!」うーんこれはちょっと待った!あえて物言いを付けさせて頂きましょう。
 ついでですから、よく耳にするプロバイダさんのうたい文句と申しますか常套句もちょっとご紹介しましょう。

「これからますますインターネットに接続する人が増えます。しかも物凄い勢いでして、一家に1台の時代が間もなくやって来ます。インターネットで情報発信し顧客をゲットすることは欧米では既に一般的。御社も早くお始めになってみては如何?」

…なるほどこの常套句に嘘はありません。確かにその通りなんです。しかしですねぇ、私はどーもこういう言葉にウサン臭さを感じてしまうのです。
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 ちょいと例え話をしましょうか。あんまり関係なさそうな話ですが実は大いに参考になるお話です。
 昔々ミニFM局(コミュニティFMではありません微弱電波のマイクロラジオのことです)が全国的大ブームになった際に、一部のお調子者は電波の出力を上げてサービスエリアを拡大すればリスナーが増えると勘違いして結局電監様にとっ捕まりました。
 今コミュニティFM局は市町村単位のサービスエリアで頑張ってますが、未だにエリアが拡大すればリスナーが増えるという幻想を思い続けておられる制作者がいらっしゃいます。
 さてさてこれらの事例を思い浮かべますと、プロバイダさんの常套句に感じるウサン臭さがより鮮明なものに感じられるのです。わかります?。

…でははっきり申し上げましょう。上記の小規模ラジオの例での結論は押し並べてはっきりしています!
 サービスエリアつまり潜在的リスナー数が拡大しても「実際に受信してくれるリスナーは殆ど増えない」これ定説なんです。(ミイラ製造集団とは全く関係ありません…笑)
 答えは簡単!肝心のコンテンツがつまんないからです。これも定説です。(笑)

              一流有名人が出ているとか世間の関心事がそこにあるというのなら話は別ですが、そうでない要するに「あんまり大したことない発信者」による「あんまり大したことではない情報」は受け手にとって限り無く《無価値》なんです。否、価値観の問題ですから、例え多数に認知されなくても有意義な情報は確かにあります。しかしですねぇ、企業が情報をバラ捲くとなったら話は別。認知されない情報はやはり限り無く無価値なものであると申せましょう。
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 確認しますが、ユーザー数の拡大は、こちらが発信するコンテンツにアクセスする数とは「全く比例しません」…。
 ま、数年前でしたら、インターネットそのものに興味を持ったPC好きな人が何でもいいからWebサイトを見まくってやろうという「ネットサーフィン」が主流でした。ですからWebサイトを作ってYahoo!などの検索エンジンに登録しておけば、まぁそこそこ頑張ることは容易でした。
 しかし今や大激戦モードしかもまだ序盤戦でございます。Yahoo!も偉くなったもんで最近は検閲やってますからね。つまんないサイトは載せてさえくれません。
 それに今の新規ユーザー(特に若年層)で言うと「ええー!マジぃー!◯◯クンの写真がイッパイ見れるのぉー?やだー見たーい」程度の意識でネットユーザーになります。ネットサーフィンはどうでもいいのです。見たいものがあるからインターネットのユーザーになっただけ。他の情報に興味を示すとは限らないのです。第一、Eメールは携帯電話の天下になりつつありますし、簡単な情報も携帯電話のiモードとかのWebサービスの侵食著しいところです。
 さてそんな新規ユーザーがドトッと増える時代。彼等の興味を集め、どう見られることが出来るか…。さあ大変だ!
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「これからますますインターネットに接続する人が増えます。しかも物凄い勢いでして、一家に1台の時代が間もなくやって来ます。インターネットで情報発信し顧客をゲットすることは欧米では既に一般的。御社も早くお始めになってみては如何?」
…しつこいようですがこの常套句に嘘はありません。しかし欠けているものがあります。それを付加した文章を書いてみましょう。(まるで添削ですね…笑)
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 これから益々インターネットに接続する人が増えます。しかも物凄い勢いでして、一家に1台の時代が間もなくやって来ます。インターネットで情報発信し顧客をゲットすることは欧米では既に一般的。しかしここで御社がどのような情報を発信し尚且つそれをフィードバックしていくか、総合的な戦略が問われます。インターネットは戦術の1つでしかないのですからね…。インターネット人口が増えても、それがそのまま御社のWebページにアクセスしてくれるとは限りません。Webサイト自体が物珍しかった時代は既に過去のものです。かつて専門性の強かったインターネットも次第にマスメディアと同じような大衆迎合型のメディアとしてその特性がシフトしています。否、専門性がなくなるというわけではありません。今のCS放送のように多チャンネル化が進んで、専門分野に特化した低視聴率番組と、大衆の関心事に特化した高視聴率番組が両立している、そんな二極化が進むと思われます。要するに、世間の関心を集める《価値ある情報》をいかに効率的に発信できるかなんです。やれますよきっと!その意気込みさえあれば。どうぞ御社も早くお始めになってみては如何でしょう?…。
…ふう、長かった。
でもこれではお客は集まりませんね。(大笑い)
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 しかし、この点を多少なりとも覚悟して始めませんと、それこそ嘲笑物の極寒サイトの出来上がりってことに成りかねません。それでも御社はインターネット荒波に船出するおつもりですか?ご健闘をお祈りします。
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 余談ですが。大手のプロバイダが思いっきり価格を下げてくるであろう超近未来。地元の中小プロバイダさんやサーバ提供業者さんの生存率は残念ながら極めて低いと思われます。生き残る道は只一つ!…ビジュアルプレゼンテーションなどの映像音声分野に長けた人材や、スピーディーに情報発信できる企業スタイルに変貌させるための啓蒙実践を行う凄腕インストラクターなんかとネットワークを組み、Webサイト構築に関する総てのコンサルタント業務を執り行う「総合Web代理店」に変貌することです。
 今や簡単ソフトを使えばアッと言う間にハイ出来上がり!のWebページです。そこに利益を求めるなら、むしろその周りにある「ノウハウ」の部分にこそ思考をシフトすべき時が来ています。ちまちまWebページを作っていてもすぐに中高生SOHOに抜かれるのがオチです。実際その現象は始まってますしね。

「Webはライブかオンデマンドか」
 Webストリームを使ったライブ(生中継)が話題になったりしてます。短時間に世界中からワッ〜!とアクセスが集中します。
 インターネットの話題性を高めるという点ではかなり有効な広告塔にはなっております。
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 ま、その対極と言えるかどうか分かりませんが、たまにWeb上でみかけますよね…どこかの無名オフィスの室内カメラを遠隔地で見るやつ。それなりに面白かったりするんですが、この程度のことは殆ど人畜無害なので大いにライブでやって頂いて宜しいと思うのです。ですが、超有名アーティストのライブなんぞはうーん如何なものかなぁ…と思うのです。ちょっと拙速過ぎやしませんか?なんて思ったりするのです。
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 いきなり恐ろしい数のアクセスが集中することにより、その途中のトラフィックが輻湊に近い状態になりゃせんか?と老婆心ながら心配したりします。勿論、サーバは連鎖分散したりして回線がダウンすることを回避すべくいろいろと努力していますが、それでもいろいろと問題は散発的に発生しているようです。
 実験としていろいろやりたいのはよく分かります。分かるんですけどね、第一そんなに大勢に見せたけりゃ、衛星だの何だの天網型メディアがあるだろうにと思うのが自然でありましょう。1台のトラポンから一度に何千万人もの人々に映像と音声をバラまける効率的なメディアと言えばなんてったって「電波メディア」の独壇場であります。
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 でもまぁ気持ちは分かるんですよ。実は我がWebラジオFMCにも「ライブで聞いてみたい」とかいうメッセージがよく舞い込みます。ちなみにFMCは完全オンデマンドでありまして、Webでのライブストリームは殆どやっておりません。(実験はやってますけどね…)
 と言いますのは、よくニュースの途中から見始めた時など「今のは何のニュースだったんだろう」と気になったりすることがあるじゃないですか。オンデマンドならそれが解消できるんですよね。いつでもどこでも好きなときに希望する情報が取り出せるのがオンデマンド最大の特性ですからね…。私はそれがとりあえず今のWeb環境に合っている、つまりネットにやさしいストリームだと思うのです。
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 年に1度大晦日に大騒ぎする「毎年恒例・FMCゆく年くる年」という番組がありまして、これは中継班を初詣で賑わう神社や繁華街に送り込み、スタジオと「生」で結んでお送りするというスタイル。中継には携帯電話をベースにした業務用のオリジナル装置を用い、他局様びっくりのかなり本格的な大形番組になります。 これもアクセスが集中するとマズイので、我々は「時間差オンデマンド」と呼んでいますが、10〜15分の時間差をつけて音声ファイルを順次サーバにアップするやり方で進めています。なんたって出来たてホヤホヤの番組が聴ける!ってことで常連リスナー様には大好評ですが、ここら辺にも「ライブでないオンデマンドのこだわり」があるの…お分かり頂けるでしょうか?
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 元々情報分散型で始まったメディアに一定短時間一極集中という無理をさせているのが、大規模ライブストリームの現状なのかもしれない。
 無論、これからWebの太さはテラだのペタだのと極太になっていくでしょう…。気が付けば《トラフィックなんてノープロブレム》の時代が到来するかもしれません。その時が来たら私もひょっとしたら「Webはライブストリームが面白い」なんて宗旨替えしてるかもしれません…。それまではオンデマンドだな私は。

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