テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.13「プランナーは生かさず殺さず。企画と水はタダ!?」
だからパクリ物ばっかなのね。
2000年5月下旬執筆(2000年7月号掲載)

(前書き)
 明治までは金持ち(億万長者とかそういうのではなく組織的にお金を運用できる存在のこと。昔で言えば商人、今なら企業)も割と見識が高かったと見えて、生きた金の使い方を実践しておりましたが、明治以降そういう気高き気風はどこへやら、目先の利益に右往左往する実に情けない金持ちが増えております。
 昔の金持ちは…世の中を動かせなくなった旧態依然の武士階級に愛想をつかし、新国家への理想を追い求めた若者達にドドドーンと投資する驚異的なベンチャーキャピタルをやっちゃったわけですからね。これは凄い。
 だだ1つ残念に思うのは、これで驚異的な成長をした若者が権力者になった時に、武士のそれよりも醜い権力欲をむき出しにしちゃったことでして、嘘でも何でもつくようになった。つまり指導者としての意識が極端に低かったということですね。どこかのネットバブル系企業にも通じるところがありますね。



 世界的に見れば「金を儲ける=立派だ!よくやった!」ということになるのが専らのセオリーです。こと明治〜昭和型を引き摺るファジー国家日本に関して言えば「金を儲ける=えげつない、何か悪事を働いたのだろう」という羨望なのか白眼視なのかはっきりしない押し並べて「よろしくない評判」で受け止められることになっております。
 じゃ何が問題なのかと言いますとね、金儲けは悪ではありませんよ絶対に。資本主義世界で生きる者全て究極の目標点の1つでありましょう金儲けは。では何が悪いのか!…答えは簡単。金の儲け方と使い方です。儲け方について言えば、悪徳商法や嘘で騙すとか言うのは論外でして、正当に嘘偽りなく真面目に自らのアイデアを具現化し、それが世間に受け入れられれば商業行為として成立するはずですし、それでOKなんです。
 一方、使い方で言えばですね「種をまくか、食っちゃうか」という究極の方法論になりますね。
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前置きが長くなりましたが、今回は「もっと上手にお金を使え!」という私の怒りにも似た感情を吐露させて頂きましょう。
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極寒モード!「ここが変だよ九州メディア」
九州各地のテレビ・ラジオのローカル枠なんかをワッチしてますとね、番組にせよCMにせよ、まぁーどいつもこいつも「パクリ(企画やコンセプトを勝手に模倣すること)」ばかりのオンパレードであります。東京キー局の番組コーナーそのままの企画、茶漬けをかっ込むヒットCMをモロパクしたCM等々…。パロディのつもりなのでしょうか?企画会議か宴席では盛り上がったのかも知れませんが、ブラウン管の中では『極寒モード』でございます。観ていて凍死しそうです。合掌…。
私、ずっと首都圏の局とかそういう現場に長いこといましてね、途中福岡や熊本でも3年ばかり仕事しましたが、その中の経験上、九州ってところは『インテリジェンスに金を払わない所』だなぁ…という強い印象を受けてます。
番組でもマルチメディアコンテンツでも基本的には同じことなので、それぞれの業種に携わっておられる方、それぞれに当てはめて考えて頂ければ宜しいと思うのですが…。

モノ作りには何でもそうですけど・・・
《制作料》…スタッフの人数、スキル、使用機材の質や量などで決まります。
《媒体料》…放送だったら電波料、新聞だったら枠や色数、記録媒体だったら製作する本数やその原価などによって決まります。
…という2大料金発生フェーズがありまして、これがクリアできなければ何も作ることは出来ません。
でもおかしいですよね。「実態を調査する」「何を作る」そういう項目はどこに入るのでしょうか?制作料?違うでしょ!制作する前にやるべきことですからね。
ね?…こういうのは《企画料》と言いまして、制作することになろうがなりまいが企画するとなったら、その作業に対して支払われるべき《当然の対価》なのです。
日本映画より香港映画の方が元気がある理由知ってます?あちらは企画というプロセスを大事にしてますから、企画を依頼するたけで企画料を支払うんですよ。例えその作品がお蔵入りになったとしてもね。ところがどうです?我が国こと九州に於いてまともに企画料なんて払っている企業ありますか?
戦争を始めようって時に、タダで作戦を立てて、戦いに出かけるようなものではありませんか?

ちなみに首都圏メディア生息地域もちょっと前までは酷かったんです。で、我々プロのプランナーやリサーチャーが水面下で連携して《企画料をきちんと設定せよ運動》を静かに展開したことがあります。月にタクシー代3000万円以上払っていた某TV局とか、番組制作費の20%(もちろん億単位)が見事に使途不明というあの局、スポーツ中継の後にスタッフ全員で風俗に出掛けてなんと番組予算で全額支払った…あ、これ以上は恐くて言えない。そーんな無駄な金の使い方をしているアホな連中に、もっとまともなところで金を使え!と言うことは『正義』です。

で、我々はそれまでまともに定義されていなかった企画料の枠を作らせることに成功したのです。私も企画会議に出るだけで結構貰えます。但し東京ではの話…。
では九州はどうか?企画会議1回3〜5千円というのがよくあります。お金は1円も出ず、お茶すら出ないという酷いところもありますね。

要するに九州ではプランナー、コンセプター、リサーチャーの類いは《全て死ね》ということなんです。それだけでは生きていけないですからね。「兼業か副業でやれ!」って言っているのと同じです。
作戦立案つまりインテリジェンスには結構お金が掛かります。最新の動きを把握するためには本だって普通の人の何10倍も読まなければなりません…。街に出掛けて、新しいメニューを味わうことだって仕事のうちなんです。そういう日々の積み重ねというか投資活動が《斬新かつ効果的な企画を生み出す源泉》になるわけですが、1回3〜5千円のトンマな賃金でやっていけるわけがないでしょ!だから九州ではいいプランナーが育たない。
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私、ある商品企画やった時は企画料として高級外車1台分のギャラを貰いましたが、それを高いと見るか安いと見るか?因にその時企画した商品は現在までに売り上げ10億円を越して今も尚全国のスーパー・コンビニで好評発売中です。

「専門教育の盲点」
弟子連中が「師匠!熊本の専門学校とかに行って若い人を育てましょうよ!」と焚き付けるので「んじゃ各学校の現状を聞いて来なしゃれ」ってことになりまして、彼等が精力的に熊本県内の高校・専門学校にリサーチしに行きました。折しも西日本新聞が5月9日付で「九州の中小、ベンチャー企業・学校交流3割前向き」なんて記事を出してましたのでこれは好都合だと思っていたのですが、ま、いろいろ分りました(熊本の)専門教育のダメさが…笑。
マルチメディアとかそれに近い総合教育をやっている教育機関の見識を押し並べて一言で表現しますと「ハードっちゅうよりソフトですけんねぇ。ゲームとかのプログラムが出来るとヨカですねぇ…」っちゅう程度のことでした。
あーあ、当然この連載も読んでないんだろーなー。
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情報処理系なら別かも知れないが、マルチメディアでしょ貴校の売り物は!…オペレーターを養成したいのかコマンダー(指揮官)を養成したいのか分かってやってるの? ま、わかってないんでしょうね。
プログラムとかそういうテクノロジーの専門家の育成はそういう人を養成するところが専門でやれば宜しいし実際やってます。
しかしだ。マルチメディアの制作者を育成するならば、業界の知識とか経験に裏打ちされたノウハウ、人生と随所で交差する個性豊かな企画力の源泉、そういったものを教えなければ何の役にも立たない。
つまり、コンピューターの手前にある脳味噌から出る「発想」の素晴らしさ、ひっくるめて「企画力」がなければお話にならないのであります。そういったものを理解した人材を1人でも多く輩出させることが九州のマルチメディア業界《未来への種まき》なのであります。
でも、そういう教育姿勢を感じられたのは正直言って《僅か1校》でありました。
こりゃあダメですよ。絶対にダメ!九州に未来はありません。断言しますよ。
IT革命が首都圏と地方の経済や情報、文化の格差を是正させる?笑っちゃうなぁ。渋谷のビットバレー小僧ごときにお株を奪われてる九州ベンチャーの惨憺たる状況は、見るに耐えないって言うのに?
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《人材育成がダメ。企画をブラッシュアップさせる方法が全く整備されていない。》
…句読点含めてたった36文字の問題点が、九州の大いなる「悪循環」の元凶であることは聡明な読者諸氏にはご理解頂けることと思います。

さて今回の結論です・・・。
これらの点を改善するための迅速かつ決定的なアクションを起こすことを私はここでご提案申し上げます。
簡単な話・・・。
『金は要らんから誰か会議室貸して!(わが社には会議室がない)』ついでに何でもいいから『小難しい肩書き』下さいな!◯◯委員とか。(学級委員、風紀委員等はNG) ま、この際フォーラムでもシンポでも何でも良いのです!若手中心でやりましょう!(前にフォーラムやシンポとかの悪口書いた責任ありますからね。私はちゃんとやりますよ。必ず結果出しますけんね。)

ともかくですね《脳味噌が冷え固まった九州頑固オヤジ》を説得するには多少こういうものが必要だと悟りましたよ今回は、マジで…。
頭のいいおじさん達が集まって「マルチメディアのインフラを展望する」こういうような会議はどうぞやってて下さい。これはこれで重要ですから。
しかし私が提唱したいのは、そういう長期政策的な会議ではなく、明日か明後日の話…。
『九州に住んでマルチメディアだのコンテンツだの、活きが良くてお金になる!そういうものををジャンジャン送り出せる若い指揮官』をどう育てるか!ってことを迅速にアクションに変えよう!という《種まき会議》です。ParaT(種田)が言ってるんだから丁度いいでしょ。
実りはね若者が結実させますよ必ず。我々は花咲か爺さん役をやろうっていう話です。
でも真面目な話。今すぐやらないとホント遅いですよ。
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因に産官学とは殆ど無縁な若手精鋭クリエーターの皆さんと私の一味とは太いネットワークがある!ってことは、これまでのこの誌面を通じてアピールして参りましたし、現在も尚、九州外に流出しつつある逸材をなんとか引き止めるゴキブリホイホイのような役割を勝手に担っております。
で、とりあえず・・。

・教育機関へのマルチメディア系人材育成に関する意識改革とその啓蒙。
・若者に対するクリエーティブ意識の向上を狙ったイベントなど様々なアクションの展開。

こんなことから始めてみましょうよ。そして将来的には、マルチメディアを通じてイマジネーションを具現化する「先端文化系教育機関」を九州の地に設立しましょう。
年齢や社会的地位を超えて誰もが学べる緒方洪庵「適塾」のようなものがあったら最高ですね。種はまかないと育ちません。しかし間違った種をまくといつか災いとなって帰ってきます。
今の九州のマルチメディア教育は、種を食べるか、間違った土壌にまいて失敗しているか…どっちかです。
育てましょう!
            ◆
蛇足ですが・・「九州は農業圏だけんねー。マルチメディアとはあんまし関係なかけんねー」そう思ったあなた残念ながら失格です。
インドじゃ自国米のDNAを次々にアメリカのいけすかない企業に特許登録されて酷い目にあってますが、コシヒカリとかヒトメボレの亜種を徹底的に持ってかれたらどうします?特許料払って米作りますか?
今年4月の我が国のインターネット利用率は15.8%で数に直すと「1893万人」に達しているってことがどんな凄いことかすぐ分りますか?前月比でなんと23%増なんですよ。 急速な変化に追い付かなければならない!これはマルチメディアに関わってしまった全ての者に課せられた命題であると申せましょう。のんびりしてると置いていかれるところか・・・死にますよ。
            ◆
とまぁこんなことにまでリサーチを展開して効果的な作戦を展開させる軍師(プランナー・コンセプター)、将軍(プロデューサー、ディレクター)がこの九州にこそ必要だと思いませんか?…必要だと思ったら、少しは私に優しくしてね…なんてね。

蛇足ですが、三国志読み返してみると、九州の今がめちゃめちゃ大変なことになっていることが再認識されます。

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