テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.18「いけてない?マルチメディアの集い…の考察。」

2001年9月上旬執筆(2001年10月号掲載)

(前書き)

私の住まいから半径500Km圏内(相当ボカしたつもり…笑)での出来事です。「ITと地域を結び付けてその発展を研究することを理念とした某組織」の会合(講演+総会+宴会というよくあるやつ)ってやつに顔を出しました。
なるほど各界の名士と呼ばれる地場の御歴々が御出席の御様子。(余談ですが、こういうのをバカ丁寧語と言います。古来から伝わるバカ丁寧語の1つに「御御御付」がありますね。余談と言うより蛇足でした。)

さて今回は、そんな会合で感じた私の率直な感想と「おいおい、いいのかえ?こんなんで…」という危惧を幾つか並べつつ『ここは反乱しかないでしょ』『いや喧嘩するわけじゃないから独立じゃない?』『独立しなくても勝手に動く遊撃隊でいいんじゃない?』なんて物騒な会話が会場の隅っこで密かに進行していたぞというお話を御披露致します。


それにしてもですねぇ。まぁ儀式典礼の類いなんでしょうか?…。これからITっちゅう新兵器を使って地域や地場産業を活性化しちゃろう!っつう威勢のいい会合でですね、代表挨拶やら来賓挨拶やら何やらという《大昔から守り続けられる式次第のセオリー》そのまんま進行しちゃうんですね。これが現実的にIT化している会社や組織だったら、まぁ皆さんも当然思い付くでしょ、いろいろカッコイイ方法で、スマートにITを感じさせる演出をやっていたことでしょう。
で、皆さんも薄々勘付いていらっしゃると思いますが、ことITと地場産業を結び付けて云々を標榜する異業種交流団体に限って、やたらと《ITから遠い》・・。

もっとも、出席されてる各企業・団体の方々の中には『業務命令で《行け》て言われたけん、出ち来たっですたい。私ゃ、なーんにも分りまっせん…ははは』っちゅう強兵がゴロゴロおらすとですたい…もとい、いらっしゃいます。否、そういう強兵を否定してるんじゃないですよ。むしろ居てくれた方がいいんです。そういう人の意識を変えていくことが重要な課題なんですから。しかしですね、この日の会合では何一つITを感じさせるものは無かったんですわ。そこらへんでよく見かける会合でしかなかった…。

さて最後はお決まりの「立食パーティ」要するに呑み会ですな。目先を変えれば「異業種交流会」ですからね、名刺交換とか企業間のお見合いみたいなチャンスはあるかもしれない。しかし地場と言えば思いきり地場の会合…実際ほとんどどこかで繋がってるようですし、企業間お見合いとしての意義があったとは思えませんでした。…とは言うものの、退屈なお話を長時間聞かされた後の解放感でしょうか、多少アルコールも入って参加者それぞれに晴れやかな表情の御様子であります。
見れば殆ど全員がスーツ姿のおじさん!という異様と言えば異様な雰囲気の中で、不用意にも私は《Tシャツにジーンズおまけに茶髪》という椎名誠もびっくりのラフなスタイルで出掛けてしまったのでありますが、持ち前の図々しさと《会費の分は元をとるべし》という「食い意地神」の御神託に従ってテーブル間をうろちょろしている私であります。
すると因果なものですね。なまじ目立つ格好をしております故、何人かの方からお声を頂戴することになります。なかなか落ち着いて飲み食いできません。

もう7年位前でしょうか?…ある会合が北海道は函館で開かれまして、不肖私にも『出席せよ!』との厳命が下り、福岡空港から空路で出掛けたことがございます。昼間の会合は無事終了、その後は函館の素晴らしい夜景を見降ろせる絶好のロケーション函館山山頂の特設会場での立食パーティであります。北海の珍味やら寿司やら何やらが食べ放題!おまけに各ビールメーカー、酒造メーカーのタイアップで何でも飲み放題!という夢のようなパーティだったんですが、宮城県から来た仙人のような怪しいオヤジにつかまり、ろくに飲み食べ出来ず終いという(ちなみにマグロ赤身の刺身4切れで終わり。マグロは熊本でも食べられます…無念)人生最大級の《残念》を経験するハメになっちまったのでありました。
あらら、話が脱線したので復旧します。

さてさて「以前からのお知り合い」「ちょっとだけお知り合い」「FMCのリスナー」「このページの読者(これが一番恐かったりする…笑)」などなど…。それぞれに楽しい会話をさせてもらったのですが、それがこんな『ITで地域や若者文化を盛り上げる勝手な連盟(別名・加山雄三主演独立IT愚連隊西へ!ホントかよ?同盟…仮題)』を旗揚げするきっかけになろうとは思ってもいませんでしたねぇ。あ…え?前から言ってたじゃないかって?…すみません嘘ついてました。前から考えていた通りのやつです…ははは。

実録マル秘トーク再録・・・。
ここからは会話ドキュメントでお読み頂きましょう。まず最初、ある人物の「ねぇ、このパーティどう思う?」という話から始まりまったんですが…。(アバンティ風)

「いやぁ、スーツおじさんの海だね。俺はTシャツにジーンズ、おまけに茶髪だもんなぁ、思いきり浮いちゃってるよ、参ったなぁ…」
「種田さんさぁ、逆に言うとね、そういう浮いてる人物がこの場に殆ど居ないってことが問題なんじゃない?」
「…ん、あるいはそうかも(笑)」
「ここに居るおじさん達って、専門職とか教育関係者を除けば殆ど現場とは関係ない人達だし、むしろITから一番遠いところに居る人なんじゃない?」
「確かに現場でやってそうな猛者はあんまり居ないようだねぇ」
「こんなパーティなんかに金かけなくてもさ、他にプラスになることがいろいろあるだろーにさ」
…むふふ、耳が痛い会話でしょ。こういう冷ややかな毒舌会話が現場担当者の間で静かに展開されちょるんですわ。でもこれって現実の話。ドキュメンタリーですからね。敢えて直視して下さいね。ではその続き…今度は某有名企業の重役様が登場致します。

「よう!種田君、ラフでいいなあTシャツにジーンズか」(重役登場!)
「あ、どうもすいません。まさかこれほどの雰囲気とは思わなかったもんでぇ…」
「いやいいんだよ。見たまえ、こーんな型にハマったおっさん連中に何が出来る?何も出来やせんのよ実際。ネクタイ姿じゃ面白いコンテンツは作れんよ。格好なんか気にせず、若い連中で変えていかにゃITなんか何も進まん」
ここで我々30代現場担当者の心中で万雷の拍手が起きる。
「やっぱ、こういうところにどんどん若い人達に入ってもらわんといかんのだけどなぁ」(さらに拍手強まる!)
…でも実際その通りで、地方に行けば行く程この弊害は強まるんですが、若い人達を巻き込むノウハウをおじさん達が全く持っていないんですね。そのクセ週刊誌などでキーワードだけチェックしてるもんだから、最近よくあるじゃないですか、市街地の空き店鋪対策で若者に出店させようというやつ、あんなのもいい例になりますが、まともなノウハウを持たずに闇雲に若者を集めているもんだから、いざと言う時に決定打が出せない。
そういうソフト面というかポリシーみたいなものが固まっていない(あるいは研究を怠ったまま)理念だけを先行させちゃうから、まとまるものもまとまらなくなる。昔の日本軍と変わらない《思い付き優先の杜撰な作戦スタイル》と大して変わらないんじゃないでしょうか。

さて、会話の続き…今度は我々30代実務者が中心です。
「前から不満はあるんですよ。公的な資金補助とかについてもそうだし、人材育成についてもそう。現場の声が全く届いてない」
「人材育成はそうだね。いい人材が九州から流出するサマを散々見ているだけに、この問題を何とかしなけりゃ。でもおじさん達って実際掛け声ばかりだもんなぁ、これじゃ土台無理だ」
「いや、若い奴の意識にも問題があるよ」
「確かに。自ら腕を磨くとか、修行するっていう意識が欠けてる奴が急に増えてきた。使えない奴が多過ぎる」
「意識面でも育てなきゃ大変なことになる」
「鍛える《場》も作らなきゃいかんでしょ」
「ベンチャーって言うと、ハード系にシフトしたくなる気持ちも分らなくはないが、日本なんてコンテンツで食っていけるかどうかがむしろこれから鍵になるんじゃない?」
「だとしたら、知識云々だけじゃ駄目で、人間の本質というか演出力とか創造力みたいなものが備わっている人材を如何に増やすかなんだけど、これは一朝一夕で出来るもんじゃない。今すぐ手をつけていかなけりゃ遅れは増々ひどくなる」
…どーですか?まるでこのコーナー『いけてるマルチメディア』の総集編みたいな会話でしょ。こんな会話が静かに熱く語られていたのですよ。

で、結論はどうなったのか?と言いますと…。
「こういうオヤジ中心組織にはそれなりに頑張って頂くとして、我々もお声が掛かれば協力しまょ。で、我々は現場の者同士、思いきり現実的な盛り上げ活動を始めちゃいましょ」
「いいね、いいね。裏◯◯◯◯だね!」※◯の中はこの日の会合名が入るのです。内緒。(笑)
「コンテンツ制作系、ソフト制作系、技術系、あと何だろ?…デザイン系とかアート系もだね、それにアド系だね。いろんな分野の仲間を集めよう」
「予算も無いことだし、まずは小判鮫よろしく、目立つ場所にひっついて行くと」
「ま、誰に迷惑かけるでなし。足を引っ張るわけでなし」
「いや、むしろプラスになるよ」
「いいね!」
「やりましょ!」

…てなことになった次第です。水面下のクチコミで広がっている我々の動きに賛同してくれる方もポツリポツリと登場しておりますよ。ちなみに近々そういう人達が集まって怪し気な会合が市内某所で開かれる予定であります。
これから何が出来るか分りませんが、軽〜い気持ちで各々楽しんでやってみようと思ってますので、皆様も温かく見守って下さいね。あ、ここまで書いたら九州での話だってことバレバレでしたね…ははは


ParaTの余談コーナー
 近頃特に思うこと…。
『人はかくも無慈悲な発言を繰り返せるものなのか?』
●インターネットが、貴賎上下の隔てなく、誰にでも平等かつ公(おおやけ)に発言のチャンスを与えたことは人類史上かつてない物凄い出来事だと思う。

●しかし一部のネット掲示板なんかを見ると、惨事の犠牲者に対する全く無慈悲な暴言。悪意に満ちた雑言。そして見ず知らずの誰かに対する威圧的な言葉遣い…等々、まさに匿名性をかさにきた酷い書き込みを多数目にする。
当然そこには謙譲も愛情も理念も無い。ギスギスしたストレスだけが介在している。
こんなものの為に「言論の自由」が保証されているのだろうか?…。
哲学、道徳での軌範がなし崩し的に崩れ、人間性の欠片もなくなっているのか?それとも只の「イキがった演技」なのか?

●誰かが便所の落書きと言った。しかし、まだ便所の落書きの方が人間の体温を感じることが多い。

●ネット接続に10分150円くらいのコストがかかっていた頃は、ユーザーの数も限られていたし、ごく普通の人的交流術を備えていた人達のコミュニティと、アンダーグラウンドなものが大好きな人達のコミュニティはかなり明確に線引きされていた。
しかし今や繋ぎっ放しのブロードバンド時代。価格破壊と共にいろんな人間が大量流入している。カオスの度合いが飛躍的に高まっているのだ。

●例えとして当っているか分らないけれど、かつては不良学生と一般学生を見た目で簡単に識別できたものだが、最近はファッションの傾向が異なり見た目だけでの識別はちょっと難しい。

●これと同じように、無慈悲な書き込みを素面でやってしまう人間が、果して性格破綻者か冷血人間か?と言うと実際はそうでないらしい…。ごくごく普通の人間がネット上のみ無慈悲なキャラに変身してしまうのである。そして毎日繰り返される無慈悲と無慈悲の応酬…。

●最近ネットで体温を感じることが少なくなった。繋げるのも好きでなくなった。
断言する!…。無慈悲のロールプレイはいつか現実の無慈悲を産出するだろう。

●ITを推奨する講演活動なんかをやっている自分に大いなる疑問を持ち始めている。
便利なツールを使いこなす前に「人間性の復興」が先決事項なのかもしれない。

●私宛ご意見・ご感想・出演依頼はEメールtaneda@fmc.or.jpまでお気軽に!

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