テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.25「現代は時間との戦い。」

2003年5月上旬執筆(2003年7月号掲載)

(前書き)

秋頃だと思いますが、遂に「本」が出ます。ちなみに自費出版ではありません。全国の書店等でお求めになれますよ。タイトルはズバリ『FMC読本〜ウェブラジオFMCインサイドストーリー〜』です。
※発行時には『聴かせてやんない!〜ウェブラジオFMCインサイドストーリー〜』に変更されています。

〜知ってる人は知っている。知らない人は全く知らない(当たり前ですね)〜九州熊本発のウェブラジオ局の老舗FMCが、何で全国1位のウェブラジオ(googleページランキング)に成り得たか?・・誕生から現在までの軌跡(と言うより右往左往の連続記)を振り返りつつ、小規模な情報発信者が生き残る「哲学」を感じて頂ける一冊です。「方向性が定まらなくて伸び悩んどるなぁ〜」というコンテンツクリエーター、コミュニティFMの皆さんなどにも分かり易い《ほどよい毒気》が満載でございます。
発売日が確定しましたら、また改めてお知らせしますので、よかったら買って下さいね!・・あ、それと!この『いけてるマルチメディア』も単行本化計画が密かに進行中なんですよ。ネタ的に古いものもありますので、うまい具合にアレンジして再執筆する予定です。どうぞこちらもお楽しみに!


初代『高原へいらっしやい』

 唐突ですが、今回は「田宮二郎」の話から始まります。20代の方はピンと来ないでしょうが、それ以上の方はみんなが知っているニヒルな二枚目俳優のことでございます。
※JR鹿児島本線長洲駅の近くに「田宮二郎内科」の看板が立ってますが、それとは関係ありません。
 旧バージョンの『白い巨塔』とか『高原へいらっしやい』を始め、多くの名作ドラマや映画に主演していました。
 1978年12月28日に彼は突然散弾銃で自殺しちゃったんですが、43歳の若さだったそうです。
 ちなみに彼の活躍は、演技の世界だけに留まりませんでした。九州では「ミスターホラヤ田宮二郎です」というテレビCMが非常に有名でしたが、高級自動車などいろんなコマーシャルへの出演や、テレビ番組の司会でもまさに大活躍でありました。
 1976年12月の『ゆく年くる年』では、制作がTBSだったこともあって、白いシリーズの田宮二郎と赤いシリーズの山口百恵が、いわゆる「紅白コンビ」ということで総合司会を務め話題になりましたが、覚えてる人・・居ます?・・ちなみにこの番組を覚えてる人はかなりのテレビ通ですよ。
 あ、そうそう『ゆく年くる年』って凄い番組でしたね。服部時計店(セイコー)の1社単独提供による全民放同一放送でありました。なにせ全民放ですからねぇ。NHK以外は全て同じ番組が流れるというわけですから凄い。
『ゆく年くる年』は、在京キー局持ち回り制作による番組でした。局の枠を越えたボーダーレスな制作スタイルにワクワクしたものです。
 蛇足ですが、実は私もこの番組の末期1987年の『ゆく年くる年』には何とか間に合いましてね、新参スタッフの1人として参加しています。
 全盛期と言うか、この頃の『ゆく年くる年』は、まさに《全民放vsNHK》という決戦スタイルでありました。
 NHKが、幽玄な篝火(かがりび)の炎の映像に乗せて「こちらは宮城県は瑞巌寺でございます」という落ち着いたナレーションでスタートすれば、民放は賑やかな銀座の街並から生中継と言った感じで、まさに《静と動》と言った対比が楽しめたものです。
 午前0時が近付くと、全ての民放の画面は、一斉にSEIKO時計の画面によるカウントダウンに変ります。
 ちなみに私の家には商売上、テレビモニタは何台もありましたから、各チャンネルを同時に視聴しながら「うーん、こっちの局はクロマが強すぎ。あ、こっちはRを上げ過ぎだな」なんて悪口を言いつつ、それでも全てのチャンネルに一切のタイムラグが無く「カチッカチッ」と正確に時を刻んでいく秒針の動きに目を奪われていました。
 おっといけない!田宮二郎でした。そうです。田宮二郎と言えばテレビ朝日系『クイズタイムショック』です。後に山口崇に代わりましたが、やはり『タイムショック』の顔と言えば、田宮二郎でしょう。知り合いなので悪口は書きませんが、中山秀ちゃんではないな・・やっぱり。(笑)
「親子連れ…。花柄シャツにジーンズはいて、赤いヘヤーに色グラス、どっちが〜親だぁ〜」(ここで山下毅雄作曲のテーマ曲カットイン)→テロップ「親子大会」→照明フェードイン→センター板付きで田宮二郎登場。
「現代は時間との戦いです。さあ、あなたの心臓に挑戦します。Time is money.1分間で100万円のチャンスです。果たして超人的なあなたはこのチャンスをどう生かすか。クイズタイムショック」このオープニングナレーション・・いやぁカッコ良かった!…。勿論私はソラで言えます。(笑)
 1分間で100万円のチャンス・・ですね。今は制度が変って1000万円までOKですが、それでも当時としてはデカい金額でしたね。
 あ、そうか。1分間というタイムリミットを設定していたわけで、さっきの『ゆく年くる年』もそうですが、どちらも《時間》というものが重要なポジションにいる番組であったわけです。
 《時間》・・そうか《時間》ねぇ・・。そんなわけで今回は《時間》のお話です。
(なんと長い前置きだろうか・・笑)


電波時計が売れている。

 電波時計が「バカ売れ」なんだそうです。ちなみに電波時計というのは、超々高精度な時計の信号を電波(長波)で自動的に受信する正確な時計のことです。 送信所が2つに増えたのと、小型化が一層進んで、安価になったのがバカ売れの主因です。
 いやぁ正確ですよ。今までは117にダイヤルしたり、NHKの時報に合わせたりと、いろいろ手間をかけないと、正確な時計合わせは出来なかったわけですが、そんな手間は昔の話になりつつあるんですな。
 パソコン内臓の時計も、自動的にタイムサーバーに接続して調整するタイプが増えて来ました。時たまよく分かってないおっさんからのメールが、時刻設定がとんでもないことになっていて、メールを見つけるのに苦労することがありますが、そういうタコな失敗も次第に無くなりつつあります。
 いやぁ、これは凄いことですよ。ともかく正確無比なんですからね。社内の全ての時計が正確無比というのは、放送局などごく限られたところでしか実現出来なかったのが、今や、3LDKの一戸建てで難なく可能です。
 なんたって壁掛けタイプで2000円しませんからね。私が使ってる腕時計タイプの電波時計なんか2980円っすよ。(安物ですが機能は問題無し)
 何年前でしたかねぇ。神奈川県の某コミュニティFM局さんと、私共FMCのスタジオを結んで同時放送をやったことがありましたが、その際は、本番直前まで時計のチェックをかかせなかったですよ。117にかけて「うむ、正確じゃな」と安心すると言った感じで。でも狂ってたら・・と思うとなんだか落ち着かない。
 これが県域局とか大きな放送局だと、何の心配も無いわけですよ。正確ですからね。あちらこちらに時計がありますから、局舎内に居るんだったら、むしろ腕時計なんか不要なくらいです。
 その安心感が遂にコンシューマーに降りて来た。
 実はですね。これもIT革命(もう死後?・・笑)の1つ言えないこともないのです。


時間系IT革命?
 例えばですね。放送局というところは、秒単位の正確さを身上として、時間きっかりに番組やCMを送出することで御飯を食べているわけですから、この《正確さ》を維持するために、かなり高額な投資を必要としております。番組送出システムもそうですが、局舎内の全ての時計を正確にリンクさせるための装置など結構大変なコストです。
 これが電波時計の降臨によって、下手をすれば個人でも超正確な送出システムの構築が可能になっちゃった。ブロードバンド時代ですけんね。もうメディアは個人運営の時代が顔を覗かせてます。しかも素人レベルの話ではなく、十分プロの土俵で勝負できるインディーズ放送局が「極めて近い将来」登場することは間違いありません。
 メディア云々だけでなく、私達のライフスタイルも確実に変化します。
 まず間違い無く「117」の重要性が薄れていく。 お昼時、テレビの画面の角っこに時刻表示が出ますが、これはまぁ無くなる事はないんじゃないかなと思いますが、少なくとも、時報の意義は薄れていきますね。何故なら、時計も確実に進化していくからです。携帯電話と時計の融合はもう実用段階に入ってます。定時や設定した時間に腕時計のバイブでブルって知らせるなんてことは、明日にでも実現可能なわけですから・・。
 となると「時計が狂ってたもんで・・」なんて言い訳も通用しない時代になってくるわけでして、ともかくカッチリ時間で生活する日常が当たり前の時代になっていくでしょう。
「現代は時間との戦いです。さあ、あなたの心臓に挑戦します。Time is money.1分間で100万円のチャンスです。果たして超人的なあなたはこのチャンスをどう生かすか。クイズタイムショック」


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